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名を呼ぶ 声が 見つめる 視線が 全てが甘い罠だとわかっていても、 私の全てが、簡単に反応してしまう。 逃れようとは思わない 罠にかかりにおいで? 後 たどり着いたのは、そこそこ高そうなマンションで。 書いてある通りの部屋の前に行き、ドアのチャイムを押すと 白銀の彼がいつものスーツ姿ではなくずっとラフな格好でそこにいた。 「ホントに来ちゃったんだ?」 不敵に笑う顔もやっぱりかっこよくて。 勢いで来たはいいが、チャイムを押した後になってからかわれていたらどうしようという焦りで手のひらが汗ばむのをは感じた。 「は?あの、あなたが来いって言うから私・・・・。」 「罠だけど、いいの?」 「え?」 「だから、これは罠だよ。それでもいいならドウゾ?」 あからさまに怪しい雰囲気満々なこの男に簡単に引っかかってしまったのは、 彼氏とあっさり別れた事で心にぽっかり空いた穴を埋めたかったのもあるけど。 こんないい男に誘われて断る女ってこの世に存在するんだろうか。 酔ってぼんやりする頭ではそう思った。 は腹をくくり思いきって玄関に踏み入れると、突然腕を引かれる感覚と後ろでドアが閉まる音を聞いた。 引っ張られたのに、はすぐに玄関のドアに後退りすることになる。 「ん、・・・・ぁ。」 ドアが閉まる音が彼の中でのスイッチだったようで。 掴まれた腕をドアに押しつけられ、もう片方の手はアタシの頬から首筋にかけてを覆い その手によって上を向かされると、何の前置きもなく唇を重ねられた。 「ふ、・・・んん。」 息をつく暇すら与えられず繰り返し口の中を攻められる。 よく知りもしない相手なのに。 一見乱暴な貪るようなキスも、 彼の唇の柔らかさと入り込む舌の感覚の心地よさでの頭はとろけそうになっていた。 ようやく離された己の舌からは、どちらのものかわからない銀の糸が同じく彼の舌へと紡がれていた。 「ハァ・・・ハァ、」 は新鮮な空気を吸うために肩で息をする。 それからはなし崩しで。 大人の男女が夜に同じ部屋にいればする事は自然と限られる。 ましてや、誘われるままに彼の部屋にいったのだからそうなって当然といえば当然だ。 「ぁ、・・・・ん!」 「ここがいいんだ?」 攻めらて、 追いつめられて、 アタシは淫らに彼を求めた。 「ね、名前呼んで?」 「う、ぁ・・・なまえ・・・?」 話しかけている時も一向に愛撫の手を止めない彼に、 アタシは耳元で囁かれる言葉を理解するのに必死。 「そ、カカシって。啼いてるのも十分ソソるんだけどさ。」 「呼んで?」 「・・・っ・・・カカシ。」 「もっと。」 「あ、あ・・・カカシっ!」 「ん、いい子だね。もっときもちよくしてあげる。」 その後何度もカカシさんはアタシを抱いた。 意識が飛ぶ寸前、 カカシさんが何か呟いた気がしたけれどそれは耳には入ってこなかった。 「んん・・・。」 あれ、ここどこだっけ? 痛む頭は恐らく二日酔いで・・・二日酔い? アタシ昨日テンゾウさんのとこで飲んでそれから・・・。 記憶がない。 徐々に意識が覚醒してくると、は自分とは違う体温に包まれていることに気がついた。 そっと隣をみるとそこには、 あの白銀の彼。 なっなっなんでカカシさんが隣に!!!?!! しかも何だか腰が痛いと思ったらお互い裸で、 それってつまりそういう事で。 アタシ・・・カカシさんとヤっちゃったの? しかも全然覚えてない。 ショックでしばらくはうちひしがれていたが、徐々に罪悪感がの中に拡がっていった。 とにかく、カカシさんが起きる前に帰ろう。 帰ってからゆっくり考えたって遅くないはず。 そうよ、。 カカシさんが起きたらどうなるかわからないもの、今は脱出するのよ。 半分パニックで、は逃げるようにして自分の家へと帰って行った。 パタン、と玄関のドアが閉まる音がしてようやくカカシは己の身を起こした。 「くくくっ、だーいぶ慌ててたみたいねぇ。あの調子だと昨日の事は覚えてないかな?」 それが少し残念そうに、でもそれでも何の問題もないという風にカカシは曖昧に笑った。 さーて、これはどうするのかな? そんなカカシの手の中には、がつけていたネックレスが日の光を浴びてキラキラと輝いている。 昨晩、家で1人ボーッとしていると突然携帯の着信音が鳴り響いた。 画面を見ると、働いているはずのテンゾウから。 少し考えから受話器のボタンを押し耳にあてると、店からかけてきているのだろう かすかに店内でいつも流れているジャズが聞こえてきた。 「テンゾウ?」 ‐先輩、今家にいます? 「いるけどなんで・・・あ、」 先輩は察しがいい人だから、 それだけで電話の意味を悟ったらしい。 「確かに渡しましたからね。」 ‐ん、ありがと。 「これでさんが先輩ん家にいかなくても、ボクのせいじゃないですからね。」 ‐わかってるよ。ちゃーんと処分しとくから。 では、とテンゾウは電話を切った。 電話口のカカシの声は少し強張っていて。 「びっくりした、先輩でも緊張する事があるんだ。」 少しいいことを知ったな、とこれでの事は無理矢理チャラにすることにした。 あれからは家に帰って落ち着いてみても、昨日の夜の事はさっぱり思い出せず。 いい歳こいて酒で記憶なくすなんて・・・・。 しかも、あのカカシさんとヤっちゃっただなんて〜〜〜(涙 アタシってサイテー。 いくら彼と別れて傷心だったとはいえ、もうカカシさんにもテンゾウさんにも会わす顔がない。 かなりの自己嫌悪に陥っていたため、ネックレスがないことにしばらく気づかずにいた。 数日たった朝。 「あれ、・・・・ない。」 え、うそ。 前につけてたのはいつだっけ? ない、ここにもない?! あちこち部屋を探したが見つかる訳もなく。 時間が迫っていたため、はそのまま仕事に向かった。 昼休みにゆっくり記憶を辿ってみたところ、覚えている限りでは最後にネックレスをつけていたのは彼と別れた日。 「ってことは、もしかして?」 その自分で導き出した結論に、は顔の筋肉がひくつき血の気が引いていくのを感じた。 ・・・マジで? どうしよう。 安物には違いないが、探しているネックレスは がやっとの思いでなんとかこぎつけた初めての契約成立を祝って、自分にご褒美として奮発した物で。 人からしたら大したことはなくても色んな人に迷惑をかけた上での達成だったため、嬉しさはひとしおだったのだ。 と、取り敢えずバーに行ってみよ。 カカシの家に直接行くことも考えたが、行くとようやく脱出できそうな自己嫌悪感が簡単に戻ってきそうで気が引けた。 「こんばんは。」 久しぶりに来たバーは相変わらずで。 何一つ変わっていないはずなのに、なんとも居心地が悪く感じるのは 全面的にアタシの心持ちのせいだろう。 テンゾウさんの顔がまともに見れない。 「お久しぶりですね、さん。」 「あ、えっと。ちょっと色々ありまして・・・。」 明らかにさんの目が泳いでいる。 テンゾウは気になったが、あえて自分からは何も聞かなかった。 「今日はいかがします?」 「あーじゃあ、一杯だけ。」 少し考えて、ソフトドリンクにしようか迷ったが1杯だけなら前みたくはなるまい、とは結局アルコールにした。 それに、アルコールでも入れないとこの前のことは恥ずかしくて聞けないし。 「かしこまりました。」 洗練された手つきでお酒を作るテンゾウさんは、なんともかっこよくて、 この時やっと、まともにテンゾウさんを見れた気がする。 「どうぞ。」 「ありがとう。」 喉を潤して、ようやくテンゾウさんといつもの様に話が出来る気がした。 「あの、」 「はい。」 「前に来た時、・・・アタシだいぶここで飲んでた?」 恐る恐るテンゾウを見ると、グラス片手に目がキョトンとしている。 「え、えぇ。まぁ、そうですねいつもよりは多く飲んでらしたようですけど。いかがなさいました?」 言うのは躊躇われたが。 でも、ネックレスのこともあるし。 何よりどうしてああなったのか、カカシさんとの繋がりはテンゾウさんしかいないはずで きっとこの人なら何か思い出すきっかけくらいはくれるかもしれない。 「あの日、ここに来てた事は覚えてるんだけど・・・その、恥ずかしながらそっから朝までの記憶が全然ないの。」 うわーテンゾウさん絶対呆れてる。 その顔は呆れてる顔だよ(涙 「先輩もそこまでは計算外だったでしょうね。」 「え?」 「いえ、こっちの話です。」 「あの、それで大事なネックレスなくしちゃって。最後につけてたのがあの日だったと思うんだけど、ここに落ちてたなんてことは・・・?」 「ないですね。」 ・・・やっぱり(涙 「話が飛ぶけど、カカシさんて最近いつ来た?」 「先輩なら、しばらく来てないですよ。」 「え・・・そうなの?」 「はい、さんが前にいらした2日前からぱったりと。」 行かなくちゃダメか〜〜。 「そっか、ありがとう。また来ます。」 「はい、いつでも。」 お代を置いて扉に向かったさんが突然くるっと向きを変えたかと思うと、 「この歳でお酒飲んで記憶無くしたなんて、恥ずかしいから忘れてね。」とばつが悪そうに言い残し再び扉に向かい今度はそのまま出ていった。 さん、やっぱりあの日先輩の家に行ったんだ。 そして今からネックレスを探しに再び先輩の家へ。 「ハァ〜。」 客が少ないのをいいことに、テンゾウは隠さずため息をついた。 ネックレス外す状況っていったらあれしかないよな、やっぱ。 あの先輩が夜に家で女の子と2人きりになって、手を出さない訳がない。 やっぱりショックだ。 橋渡ししたのは自分だけども。 さんが抱かれた事も記憶にないならバッサリ先輩のことフってくれないかな。 でもあの先輩のことだから、上手く立ち回ってさんを手に入れるのだろう。 まさかとは思うがそれを踏まえてのネックレスだったりして・・・。 ありえそうで、怖すぎる。 先輩との約束はすっぽかそうと思えば出来たのに。 バカ正直に言うこと聞くなんて、ボクも大概イイヤツというか使われてるというか。 がここに通うようになってからしばらくした頃、 頼まれ事をして欲しいと言われ昔から先輩からの頼まれ事はろくな物がなかったからキッパリ断ろうと思っていたのに。 『サンがさ、いつもより飲んでてオレが居ない時にこれ渡してくれない?ちなみに、オマエに拒否権は一切ないからv』 さんと出逢ってから、女遊びも止めたようだし。 先輩が相手じゃ敵うわけないよな、 ・・・ボクって先輩といると昔から損な役回りばっかり。 これでを不幸にしたら、今度こそ腐れ縁を断ち切ってみせる! と1人意気込むテンゾウであったが、きっとこれからもカカシの為に何かと一肌脱ぐに違いない。 一方で、気が進まないながらも財布に入っていたコースターの住所を頼りに はカカシのマンションの前に立っていた。 何となく思い出してきたような。 あの日、散々飲んだ後 テンゾウさんからこのコースターを渡されて たどり着いた先がカカシさんの家だった、と思う。 で、あの朝に繋がる訳ね。 全貌はなんとなくだが掴めた。 しかしどうしてテンゾウにカカシの家の住所を貰ったのかとか、あの最中の事とか細部は全く覚えていない。 覚えてなくてよかったというかなんというか。 ・・・・あぁ、でもこれからお酒は控えめにしとこ。 もう!ぐちぐちしててもしょうがないわ。 電気ついてるってことは居るのよね、ネックレスの事聞くだけよ。 行くのよ、! は強張る足をなんとか前に出し、カカシの部屋の扉の前にきた。 ピンポーン 中でチャイムの音が聞こえる。 しばらくして、ゆっくりと扉が開いた。 「いらっしゃい、サン。」 「ど、どうも。」 「あれからぜーんぜん来てくれないから、オレ一回ヤってポイされたのかと思っちゃったv」 ニヤリと笑うカカシさんは、悔しいくらい綺麗に口の端をあげる。 「なっ///バカな事言わないでください。今日はそのつもりで来たんじゃありません。」 「取り敢えずあがったら?」 「・・・ここで結構です。」 明らかな拒否にカカシは思わずクスクスと笑った。 「あらま、オレ嫌われちゃった?」 「嫌いもなにも、あの時の事は忘れて下さい。私も忘れますってまぁ、・・・覚えてないんですけど。」 「覚えてないんだ?」 そんな気はしてたけど。 「はい、全貌はわかったんですけど細部は闇の中と言いますか。」 「ふーん。・・・・サン、あんなに激しかったのに?」 「カカシさん///!!!」 「で、返して欲しいのはこれ?それともキミの心?」 チャリ、と音がしてカカシの手にはが探していたネックレスがぶら下がっていた。 「ちょっと、バカな事言ってないでそれ返して下さい。」 「くくく、連れないねぇー。いーじゃない。ちょっとくらい冗談に付き合ってくれたって。」 「あの、いいかげんに・・・・っ!!」 カカシは怒り出しそうなの唇を、素早く己の唇でふさいだ。 「いきなり何するんですか?!」 「んー?なにってキス。」 「そんなの分かってます!アタシが聞きたいのは何でしたのかって事です!!」 「あぁ〜そっちね。」 あくまでものんびりしているこの男に、は頭の血管が切れそうになるのを必死にこらえた。 「だってサンの唇、病みつきになるんだもん。」 「なっ?!な、ななな////」 言葉にならないをケラケラと笑うカカシ。 「ねぇ、オレずっとサンのこと見てたの、知ってた?」 急に真面目な顔つきになり、はカカシという男がちっとも掴めずどぎまぎしていた。 「・・・知ってましたよ。」 「そうなんだ、嬉しいね。」 「テンゾウと話すがいつしかスキになっててね。」 「え?」 戸惑うの耳元に唇をそっと近づけて、カカシは毒にも似た甘さをたっぷりと含んで囁いた。 「ね、オレのモノになって?」 「あの、カカシさん?」 「イヤ?だったらオレの事突き飛ばしてネックレス奪ってさっさと帰りなよ。」 ちゅ、とカカシはの腕を捕らえそのまま指に口づける。 「あ、」 少しずつにあの日の記憶が蘇る。 『・・・名前、呼んで?』 あの日のカカシさんは月夜を浴びてとても綺麗で。 女でも男の人に欲情したりするんだ、とは初めてその事を知った。 『』 何度もアタシの名を呼んで、 何度もアタシに名を呼ばせた。 まるで魔法のように。 でもきっとそれは 甘い甘い カカシさんがアタシにしかけた罠。 「だから最初に言ったでしょ?これは罠だよって。」 カカシさんに甘く囁かれてしまったら、アタシはもはや逆らえない。 はゆっくりと引かれるままに、 足を一歩一歩進め玄関の中に入る。 後ろではあの日と同じ、扉が閉まる音。 カカシはに重ねるだけのキスをした。 「かかってくれてありがとう。」 「死ぬまで愛してアゲルネ。」 罠にかかった獲物は捕食者のなすがまま。 ザンネンだったね。 オレの罠にかかったら、二度と逃れられないよ。 でも安心して。 オレが罠にかけてまで手にいれたいと思ったのは、が最初で最後。 読みきり夢、いかがでしたでしょうか。 ちょっとキワモノ系?を演出してみたのですが、 断片的な映像は浮かんでもそれをうまく文章に表現しきれないワタクシ(涙 ニヤリ、と色気たっぷりに笑ってさんをあまーい声で誘う感じがテーマでした。 想像では、破壊力たっぷりですw 今回初めてイヤーンな表現をしてみて、難しい上に照れてしまって先が書けないなんて状況に陥っていました(汗 相変わらず自分で自分を追い込むのが得意な模様。 ドMだろなんて事は本人思ってもいません。 えぇ、決して思っていませんよ! でも例に漏れずカカシ先生の罠なら、自ら進んで飛び込むに違いありません。 普段はイジル方がよっぽど得意だってんだから腐った脳内がなせる業でしょうw 意識が飛ぶ前に、カカシ先生がさんになんと囁いたかはご想像にお任せいたしますv |